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汎用型支援ロボット(004)
2017/04/08 12:00 | Comments(0) | 連載
ちなみに、ちなんでもいないが、この連載作品は、オチが決まっていない。ある意味、僕が小説を書く過程そのものかもしれない。いや、普段は、おぼろげながら、ゴールというか、エンディングとか、核になるストーリー・エピソードの骨格は考えてはいる。そして、こんなもんかなーっと、表現とか描写とか設定とかあまり細かいこと考えずに、先へ先へと書き進めてみる。それで、前後の整合性などを踏まえながら、「あーこのエピソードは矛盾するから使えないわ」とか、「ここでこうしないと後々流れが悪くなるな」とか考えながら、切ってはくっつけ、ちぎっては直してあーだこーだつくっていくのである。

 まぁ、公開していなければ、水面下で設定を変えつつ新しい方向性に舵取りしていくこともできるが、今回、途中で詰まってしまったらどうしよう……。公開して航海ができなくなって後悔……。
 以下続き。


汎用型支援ロボット(004)

 
 初めて家に届いたそいつは、ひどく無口だった。まぁ当たり前だ。いくら最新で高性能の人工知能を積んでいたといっても、基本的に、人間が喋ったことや命じたことへレスポンスをするという流れは変わらない。そのレスポンスがいくら機転が利いて、当意即妙だろうが、所詮はロボットなのだから。
 
 身長は、146cm。幼い子供が好きなわけじゃない。単純に、僕の暮らすアパートの部屋が狭いのだ。狭いだけじゃあない。天上も若干低い。そんな狭い部屋に、背の高いアンドロイドがいたら落ち着かないだろう。
 だが、そんな思いが調整技師に伝わったかは分からない。「ええ、ええ、可愛いことは正義です。いろいろな面で。いや実は私もガイノイドを所有していましてね……」ガイノイドとは、女性型アンドロイドのことだが、打ち合わせの度にアンドロイドへの熱を語るこの人にとって、自分のアンドロイドの話になるのであれば、もう堰を切ったように話は止まらないだろう。話をさえぎって、説明の続きをうながしたのは言うまでもない。
 ちなみに、身長が小さい方が、値段も高いという。小型化すると、頑強性などの担保が難しくなるのだそうだ。だが、売れ行きは小型タイプの方が断然よいのだという。何故だろう。
「では、登録証にサインをお願いします」
 通常アンドロイドの起動方法は、首の後ろにあるキーシリンダを回し、基盤にロックコードを入力するか、音声認識システムを使う。音声認識の場合、工場出荷時に定められる固有のシリアルナンバーを読み上げる必要があるという。
 しかし、「よりアンドロイドを親身になって」という販売店『ハダリー』の方針より、既に起動済みの「彼女」を、お届けにあがるというのが、譲れないこだわりらしい。怪しい店から女の子を家に呼んだようで、近所の人がいない、夜に頼んだのは仕方が無かろう……。
 僕は、登録証にサインをして多路須さんに渡した。 
「はい、確かに。何か問題がありましたら、いつでもご連絡ください! あ、お店に繋がらないときは、私の名刺にモバイルの連絡先もありますので、遠慮しないでくださいね」
「はい。ありがとうございます。それにしても、多路須さん、何だかいつも以上に嬉しそうですね」
 僕がそう言うと、多路須さんは僕の両手を握り、よくぞ言ってくれたと言わんばかりに上下に振った。
「ええ、ええ、もちろんです! この、お客さんのご自宅にお届けするのが、一番達成感があるんですよ。そうですね、なんというか、運命の二人を引き合わせた仲人のような……」
「お、大げさですね……」
 何とも、この人は、初めて会ったときからこんな感じだ。本当に楽しそうで、こっちも思わず笑ってしまう。
「おっと、長居は無用ですね。それでは伊吹さん、楽しいお二人の生活を!」
 多路須さんは、深く頭を下げると、『ハダリー』のロゴが入った自動運転車に乗り込み、帰っていった。
<続く>

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