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呪いと世界との関係性について
2010/11/14 23:14 | Comments(0) | TrackBack() | 思考及び書くこと
気付いたら、本心・本音・「本当の自分」なんてものを失っていた。 多元解釈の呪い、それは、既に自分自身にも及んでしまったのだった。 彼は、彼という存在を信じられない。 感情――それが、効率よく他者と協力するための機能であることを知ったとき、彼は、その機能の欠陥を思った。 しかしながら、彼に対して、強烈な楔を打ち込むことも可能である。 貴方の考える理解というものは、貴方の幻想に過ぎないのですよ、と。 彼の狂気に満ちたその言動は、彼の目に映る魑魅魍魎がゆえに。 しかしそれは、誰の目にも映ることはありえないのである。 彼は、呪われた自分を呪った。 しかしその時彼は、まだ本心というものをもっていた。 彼が、自己を失ってしまったのは、自己を縛る呪いすら相対化してしまったからだ。 ここで彼は、劇的に変化を遂げる。 彼の世界には、主観も、客観も生じなくなる。 ただ、その時、そのものすべてが世界なのであって、即ちそれが自分自身なのである。 世界は傍若無人な絶対者から転じ彼自身になった――否、彼が、世界の一部に溶け込んだのか。 解説 「胸毛すっきりしたい!」  彼は思い立った。  果たして、胸毛をすっきりさせて、自信をもって女の子に告白をする。女の子は、二つ返事で喜んでくれた。自分も、天にものぼる幸せをかみ締める。  しかし同時に彼を襲う思考がある。 (俺は、胸毛をすっきりさせて彼女をGETできた。しかし、本当の俺は、胸毛がボーボーだ。俺の彼女は、「俺自身」を好きになったのではない……)  彼は、我慢ならず、胸毛を元に戻した。否、前にもましてひどいボーボーである。即ち彼は、最低の行為をしたのだ。彼女を、試したのだった。  しかし彼女の反応は、驚くべきものであった。 「ケイくん、そんなこと気にしてたんだ。バカだねー。わたし、毛、こゆい人、好きだよ」  口元に手を当てて上品に、などということは全くなくて、彼女は、本当にふきだしていた。  その、女性としては少しはしたない姿を見て、彼は安心したのだった。  ところが、既に、彼は手遅れだったのである。  彼は、彼女を、胸毛ボーボーの自分でも愛してくれる存在、としてしか思えなくなったのである。即ちこういうことだ。彼は、変化する自分自身に気付いてしまったのだ。同時に彼は、自分の多面性にも気付いてしまう。  あろうことか、ついに彼は、彼女すら疑ってしまう。  心を穏やかにしてくれる彼女の笑顔。――それが、張り付いた冷酷な嘲笑である可能性を、彼は否定できなくなった。  彼女といくら身体を重ねあっても、いくら千の愛の言葉を交わそうとも、彼は彼女を――否、流転する自己そのものを、到底に信じられなくなったのであった。  本文は、その後のお話です。誰の? ケイくんの、です。

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